些細

数日前。足の裏にちくちくとした痛みがあり、見てみると短い髪の毛が足の裏の皮膚に完全に入り込んでいた。皮膚に髪の毛が入ってしまうことは過去にも何度か経験はあるが、毎回新鮮に驚く。

地面を踏むたびに地味に痛くて集中力を奪われるのが嫌だった。どんな厄介な毛だろう。 手こずりながらピンセットで引きずり出したら、それは拍子抜けするほど短く、頼りなく、柔らかく、短い髪の毛だった。

わたしが体をこわばらせたり勝手に傷ついたりしているもの正体はだいたいこういう驚くほど些細なものだということが多い。

このところ、自分がやらなくてもいいことを自分ひとりがやっていて、それをまあそういうものかと割り切れるときとそうでないときがあるんだけれど、いまは後者だ。それどころか自分ひとりが「やらされている」という感覚があり、これが気持ちをじわじわと蝕んでいる。ほんの2、3センチぐらいの細い毛を弄びながら思った。多分この感情の根っこにも、情けないほど些細な理由が隠れている。

摘出した髪の毛を同居人に見せようとしたが、全く興味がなさそうだったのでゴミ箱に捨てた。ピンセットで傷つけて血が滲んだ足の裏はしばらく痛んだけれど、どんな痛みだったかいまはもう思い出せない。